音楽のはなし


デニス・ブレインについて

あなたはD・ブレインという人物をご存知でしょうか?
彼は1921生-1957没の英国きってのホルン奏者です。
没年を見ても分かるように彼はいわゆる”夭折した天才”という事になっています。

一般的な音楽ファンの間で彼の名が挙がるときは、その
”伝説的行動”と結び付けられる事が多いようです。
気違いじみた趣味の車の話、殺人的なスケジュールが
巻き起こした逸話の数々・・・。まあ彼の”普通の”奏者とあまりにも違う
状況を考えれば当然とは思いますが。

ところで、彼の音楽については正確に分析されたり、あるいは
正当な意味で評価されたりといったことは、実は少ないのではないかと思ってしまう
ところがあります。彼の音楽を一言で語ることなどできないし、真剣に考えると大変なことには
違いないでしょう。そんな折に一冊の本を知人に見せてもらいました。
イギリス人の手によるもので、ブレイン一族の音楽家としての系譜から本人のキャリアの事細かい検証
までが書いてあります。できはいいと思ったのですが、肝心のタイトルを忘れてしまいました・・・
分かったら書き加えます。申し訳ありません。

こんな具合に、文章の力で彼の素晴らしさを表現しようとする人は
いない訳でもありませんが、翻って実際に演奏している我々が彼をどう評価している
かとなると疑問が生じます。”過去の人”として扱われているように、思えて
なりません。楽器や奏法の進歩によって、彼のいた時代と事情が違うのは
確かですが・・・大事なことを見落としているように思うのです。

器楽奏者が最も苦労することは、やはり”歌うように”歌いきると言う事だと
私には思われるのですが、この観点においてブレインはある答えを用意してくれています。
結局、”歌うこと”が最も自然かつ美しいということ、
この当たり前の考えを推し進めることが優れた演奏家には必要不可欠だということ。
他の特に優れた演奏家と比較すれば、彼の目指したものが
より分かると思います。

音楽ならびにホルンを必要とされる皆様
D・ブレインはお好きですか?
私にとっては、好みの問題以前に”当たり前”すぎて
受け入れるしかないというところです。
”忘れちゃった”って方は、東京文化会館4Fみたいな
所に出向かれて、ぜひお聴きになって下さい。
私の好きなのは・・・あっ、これはどうでもいいことですね。

R・バボラクが某オタク管楽器雑誌にインタヴューされた時
”D・ブレインのように自分の音楽を歌いたい、(師匠の)Z・ティルシャルみたく
[ホルンを吹く人]にはなりたくない”って言っていたのを思い出しました。
この人まともだよ・・・良かったぁ。